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2008.02.25 Monday  | - | - | - | 

便利が人間をバカにする

 先日、3歳児がベランダから転落して死亡したという事故があった。少し前にも同じような事故があったような気がする。先日の事故の3歳児は、よくベランダの室外機の上に上って遊んでいるのを母親に注意されていたとのことだ。こういうことをすれば危険であるということを解さない子供。こういうことをしたら自分の命を落としてしまうのだということに気づかない子供が増えている。
 
 私には3歳と1歳になる子供がいるが、このたび新しい家に住みはじめて間もなく、「しまった」と思ったことがひとつある。それは、我が家にはガスが通っていないということだ。いわゆるIHクッキングヒーターという電気で調理したり風呂を沸かしたりする装置をつけたので、ガスいらずなのだ。なんでも最近は火力を使わなくても電気の生み出す強力な熱でおいしい炒め物などもできるらしい。妻の強い希望もあり、実際キッチンを使うのは私ではなく妻であるし、工務店に「ガスがなくて困ることはないのか」とたずねたところ「焼肉パーティでもしない限りはない。」とのことだったので、IHクッキングヒーターを採用する運びとなった。「しまった」と思ったが時すでに遅しである。これでは我が子にガスや火の怖さを教えられないではないか。ガスの通っていない我が家でどうやって子供たちに火の怖さを伝えよう。我々大人はまあいい。我々が子供のころにはIHクッキングヒーターなどというものはなかったわけだし、火の怖さは十分知っているからだ。しかし、今後IHクッキングヒーターが全国の家庭に普及したとしたら、これは由々しき事態ではなかろうか。普及して3世代もすぎれば大人も子供もガスや火に対する知識がなくなり、突然の出火などにものんびり対応してしまい、無知がゆえに命を落とすなどという事故が相次ぐことだろう。
 
 現代技術の生み出す便利さや快適さは確実に人間の脳をだめにし、感受性を奪っている。例えば、今のところそこまで普及はしていないが、日本のほとんどの人が外断熱や床暖房つきなどという快適な家に住んだらどうなるだろう。家の中は常に一定の快適な温度に保たれる。冬は暖かく、夏は涼しい。つまり家の中では、寒くて震えたり、暑くてたまらなかったりという経験をしないことになる。私の世代なら経験しているような、外から帰ってきてストーブをつけて、点火するまでストーブの前で震えて待つということもなければ、石油ストーブの石油が切れて、家の外に寒い思いをして石油を注ぎにいくということもない。楽を得るための苦というのを強いられないままに、楽がすでに目の前にあるのだ。そんな生活からは、少しでも不便な生活を強いられるようなことがあろうものなら耐えることを知らずにぶーぶー文句を言うような人間が当然のごとく育つだろう。そしてもっと言うと、自分の思い通りにならなければすぐに投げ出したり、キレたりするような人間が育つのではないか。
 
 古来日本人は、移り行く四季の中で類まれなる感受性を育み、詩歌などにもその季節感を繊細な手法で表現してきた。しかし今の生徒たちの作文ひとつとってみても、その「感受性からくる表現」の乏しさといったらない。
 
 本来冬は寒いのが当たり前で、夏は暑いのが当たり前である。私が常々いけないと思うのは、便座の暖かいトイレが増えていることである。様式便所の普及により和式便所でしゃがむ苦労を免れた我々は、少し前までは、特に出先では、様式便所とはいえ冬の便座は座るときにもも裏がヒヤッとしてとてもいやなものだった。もちろん今でも電気の通っていない便座もあるが、デパートやオフィスではほとんどが暖かい便座ではなかろうか。座るときに冷たいのは当然いやなわけだが、「冬の便座は冷たくて、トイレに行きたくないなあ。」ということを思うこと自体が豊かな感情を養う上で極めて大切だと思う。今の日本においては、何の不便もなく、痛い、つらい、寒い、などという感情を一度も体感することなく一日を終えるということも少なくないはずだ。それは、「生きているという実感がない」という若者の心情の大きな原因のひとつである。そして、「他人の気持ちがわからない」という問題にもつながる。自分が痛い思いや、寒い思い、つらい思いをしなければ、他人のそういった気持ちもわかるわけがないのだ。人の痛みを知らない者がケンカをすると限度を知らない。おまけに苦労をしていないから我慢がきかず、ついエスカレートしてしまい、相手を殺してしまうなどということが起こる。また、現代の若者の無気力や虚無感なども、生きている実感を得ることのできない生活が原因になっているのではないか。楽を得るための苦を必要としない日常からは「頑張ろう」などという気は起きないのだろう。
 
 若いときの苦労は買ってでもしろとはよく言ったものだ。極度の利便性は人間から苦労の機会を奪い、人間をバカにする。人は弱い生き物で、安きに流れるのが常だ。便利なものが出たら使いたくなるのが普通だろう。だからこそ世の中の便利化に待ったをかける必要がある。フランスで時速500キロの電車が完成?絶対必要ないでしょう。
2007.04.12 Thursday 22:10 | comments(3) | trackbacks(2) | 憂國・教育 | 

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2008.02.25 Monday 22:10 | - | - | - | 
milesta (2007/04/13 2:02 PM)
こんにちは。
書かれていること皆同感です。
最近日本の江戸・明治の頃を舞台にした本や、アメリカ開拓時代の物語をいろいろと読んでいて、その頃は今より不便で貧しかったかも知れないけれど、「生きているという実感」はあっただろうなぁと考えていたところです。

コンビニとケータイも「我慢のできない人間」を大量生産している気がします。ケータイを持っていない知人が友人と待ち合わせし、待ち合わせ場所から数メートル離れていたら、相手が「いない」と思いこんで慌てて店内放送で呼び出したそうです。普段ケータイを使い慣れていると、辺りを見てみるとか、少し待ってみるとか、そういう我慢ができなくなっているのですね。

ガスの問題は、カセットコンロを時々お使いになってはいかがですか?うちもキッチンは電気なのですが、鍋用にカセットコンロを使っています。
カルマ (2007/04/14 12:58 PM)
コメントありがとうございます!ケータイはまさに日本の若者をだめにした元凶であると私も思います。未成年者のケータイの所持を禁ずる法律でもできないものかと思っているくらいです。一日にメールのやり取りに費やす時間が10時間を越す高校生も少なくないというのが驚きです。
 アドバイスありがとうございました!冬にはカセットコンロで一家で鍋を囲もうと思います。
営繕屋 (2007/12/07 3:16 PM)
突然お邪魔いたします。

おっしゃる事ごもっともですね。

便利になる事で、安全になる事で、一つ一つ無くして来た能力は振り返ると大きな財産かもしれないです。

職業柄、便利で快適な住まいに関わる商売をしていますが、実生活は30年前の状態で夏でもエアコンはほとんど活躍していないですし冬はやっぱり寒いです。
床暖房など一生縁が無い生活です。
ガスを使わない時は元栓も止まっていて、野菜が欲しい時は、畑まで取りに行く生活です。

おかげでいい歳ですが元気ですねー










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